恋口の切りかた

それから、


「賭けのつもりだったんだ」


ぽつりと、そうこぼした。


「賭け?」

「まだ彼女の正体を聞く前のことだったがな。
あいつが、縁組を断って俺との仲を続けることを選ぶなら、俺もそのままでいるつもりだった。あの長屋で、二人で過ごすつもりだった。

そのつもりで──

金魚屋として出入りするついでに、蘭学や絵に興味のある武家の連中に彼女のことを売り込んでおいた。美人で酔狂な武家の家出娘が、町人のフリをして変わった絵を描いてるってな。

そう聞けば、当然興味を持つ者が出てくるとわかってた。彼女が描く絵ではなく──亜鳥自身に」

「あんた……」

「だが、そうして泉家との縁談が持ち上がったら、彼女は俺との仲ではなく家を守ることを選んだ。武家の女としての生き方を自ら選んだ」


俺は賭けに負けたと思ったのさと、彼は嗤(わら)った。