恋口の切りかた

留玖と亜鳥が去った後、

俺は藍色の闇が降りてきたススキ野に立つ男を、じっと見つめた。


「彼女の素性を知ったのはいつだ?」


俺は二人のやり取りを思い描きながら尋ねた。


「円士郎様に知らなくちゃならねえと言われた直後だよ」


彼は、あの雨の日を示してそう答えた。


「……あんたはこれで良かったのか?」

「何が?」

「とぼけるんじゃねえよ」

何を考えているのか読めない白い顔を、軽く睨む。


俺は大きく溜息を吐いた。

「あの雨の日、あんたから話を聞いて、俺は驚いたよ。
あんたは……何つうか、そういう人間じゃねえと思ってたからな」

「そういう人間、ねェ……」

翠玉のような目を歪めて、男は自嘲気味にせせら笑った。

「なら、どういう人間だと?」

「つまり──女に本気で惚れるなんてことはしねえ人間だと思ってたってことさ。いつも瓢々としてて、江戸の人間みてえな粋なところがあってよ。
大体、俺はあんたから女遊びを教わったんだからな。

それが――随分らしくねえことしてるじゃねぇかって思った」

「女に本気で惚れるのは粋ってものさ」


唇の端を片方だけ吊り上げて、棒手振男は苦笑とも皮肉とも──粋な笑い方とも思える微笑を見せた。