恋口の切りかた

祝言の前日に花嫁を辱めようとするとは、明らかにそうと知った者による嫌がらせだ。

おそらく、雨宮家か──嫁ぎ先である伊羽家を陥れようと企んだ者が裏にいる。


或いは、この両家が結びつくこと自体を嫌った者が、今回の縁組みを破談にしようとしたのか……


二年前、蜃蛟の伝九郎に襲われた相模家の加那の時にも、
得体の知れぬ者に傷物にされた娘などいらぬと、当時加那にあった縁談は先方から断られて立ち消えとなったと──そんな噂が流れた。

ここで亜鳥が襲われていれば、
伊羽家と雨宮家、両方の面目を潰して婚儀を白紙に戻すことになっただろう。

加那のことを思い出しているのか、隼人が苦々しい表情になって浪人たちを睨んだ。


「そんな怪しい手紙に乗せられんなよ」

よりによって、祝言の前日に。

俺は亜鳥の、それこそ聡明な彼女らしからぬ軽率な行動にあきれて、

「すまない。どうしても、気になってしまって……」

亜鳥が項垂れた。


留玖が、俺の着物の袖を、ぎゅっと握った。


そうか……祝言の前日だからこそ、なのか──

政敵のもとに嫁ぐからこそ、

嫁ぐ相手によって没落させられた事件の「真相」などという言葉が文に書かれてあれば、確かめたいと思うだろう。


決して愚かな女ではない彼女を、こんな行動に走らせてまで、知りたいと思わせた「真相」。

それを知っている俺は、それを知っている留玖の手を握って──


金髪の男の緑色の瞳を見た。

そこには苦悩の色があった。