恋口の切りかた

実力を引き出せずとも、金属が仕込まれた天秤棒には、振るう者次第で人間に対する十分な殺傷能力がある。

「話も聞き出さずに殺したのか?」

俺は、いつでも冷静なこの男らしからぬ行動に疑問を感じながら訊いた。

「全員一撃です」

倒れた浪人たちを調べていた隼人が、そう報告した。

俺たちの視線の先で、しかし遊水は表情一つ変えることなく、


「話を聞くのにこんな人数は必要ない。数が多すぎたから半分は殺すつもりだった」


冷徹にそう言い放った。


隼人が顔をしかめた。

留玖が「なるほど! そうですね、私でもそうしたと思います」とかわいい声でなかなか物騒な同意を示して、

年頃の娘らしからぬ言葉を口走った少女にぎょっとした目を向けて、隼人が苦笑気味に「有り得ねー」とボヤいた。


俺は蒼白な顔をした亜鳥をちらりと見る。

遊水の行動や留玖の発言は、隼人が戸惑うように冷酷ともとれるものだが、
しかし己の身一つではなく、守るべき者を背にして一人で大勢と対峙したこの場合、状況を把握した決断とも思えた。

どうやら俺の勘違いで、どこまでもこの男らしい冷静沈着な判断と対応だったらしい。


青い顔をしたままの亜鳥から、いったい何がどうなって祝言の前日にこんな状況に陥ったのかと事情を聞けば──


昼間、雨宮家に投げ文があり、そこには

雨宮が失脚した真相を知りたくば、夕刻にこの場所まで亜鳥一人で来い

という内容が書かれていたらしい。


しかし手紙に従って来てみると、そこには十余人の浪人たちが待ちかまえていて、彼女が真相について尋ねても何の答えもなく、

どうも相手の目的は亜鳥を辱めることにあったようで、危うく手籠めにされかかったところを、

偶然通りかかった遊水が助けた、

と、こういう顛末だったようだ。