恋口の切りかた

「酷いよ……」

気づいたら、自然にそう漏らしてしまっていた。

「留玖……」

私のほうを向く円士郎の気配を感じながら、私は下を向いたまま、彼の袖をぎゅっとつかんだ。


以前、私は円士郎が信頼している人なら信頼できると言った。

けれど……わからなくなった。


「エンは──どうして、そんな酷いことを平然とするような冷たい人とつき合ってるの?」


震える声で尋ねた私の手を、円士郎が握った。

どきん、と心臓が音を立てるのを聞きながら、円士郎の顔を見上げると、


「あいつが、そういう冷酷なだけの男じゃねえことも知っているからだ」


円士郎はどこか悲しそうな表情で、きっぱりとそう言った。


「だからこそ──今回のことはわからねえ……!」


円士郎は怒ったように私から目を逸らして、壁で揺れている水面の光を睨みつけた。


「エン……?」

「あの野郎、いったいどういうつもりだ──!?」


実はこの縁談の裏には、伊羽青文という人の、私たちの知らない覚悟があったのだけれど……

私がそれを知るのは、全てが終わった後のことだった。