恋口の切りかた

あ、そうか……。

さすが円士郎は頭がいいなあ、と思って、
鋭い目で水路の水面を睨む彼の横顔に、私はちょっぴり見とれてしまった。

「青文がこれを回避する方法は、敵対関係にある雨宮家に恩を売る形で手を結ぶこと──つまり、雨宮の娘である彼女を自分の正妻として迎えることだ。
雨宮家の再興に手を貸し親類となることで、戦うことなく敵対者を排除することができる」

「でも……そんなの普通、雨宮家のほうが受け入れるの……かな?」

恨みを抱いている相手のもとに、娘を嫁がせたりするものだろうか。

「もともと縁組み話が進んでいた泉家は中老家、伊羽家は永代の家老家。家格が全く違う。

しかも伊羽青文は今、この国の政治の中心にいる。
家の再興を最優先に考えるなら、亜鳥も、雨宮家も──この話を蹴ることなんざできるワケねえんだよ」

「そんな……」

「知ってるだろ、留玖。青文は頭がきれる冷徹な奴だ。
こういう計算をして妻を娶ることくらい平然とやるんだよ」

水面の煌めきを見つめる円士郎はいつになく不機嫌そうだった。

私はあの遠い日の晩に垣間見た、無気味な覆面家老を思い出して肩を落とした。


亜鳥さん……

好きでもない人のもとに嫁ぐというだけでも酷い話なのに、
仇のもとにお嫁に行くなんて──そんな決意をするなんて、どんな気分なのかな……。