恋口の切りかた

忘れもしない。

私がまだ結城家に迎え入れられたばかりの頃の事件が脳裏に浮かぶ。


もちろん家中では知られていないけれど、
あの夜、父上と共謀して伊羽青文は雨宮家を陥れ、当時の当主を切腹に追いやったのだ。

あれから雨宮家がどうなったのか詳しくは知らないけれど、次席家老の座を失い、勢いを失ったと聞いている。


事件の真相を伏せた状態にしても、伊羽家と雨宮家は完全な敵対関係にあるのではないだろうか。

真相を知る者にしてみれば、伊羽青文は雨宮家の仇敵に当たる。


よりによって、そんな家同士が縁組みするなんて──私には信じ難かった。



「そのこと……なんだけどよ」

円士郎は、言いづらそうに口を開いた。