恋口の切りかた

「おつるぎ様……これ」

しばらくしゃがみ込んで泣いていたら、間近で声がして、


顔を上げると、涙でぼやけた目の前に銀色のかんざしが差し出されていた。


「どうぞ」

「え?」

驚く私に、正面に座り込んだ女中は困ったような笑顔を浮かべた。

「私には不似合いな高価な品ですし、おつるぎ様が持っていてください」

そんな風に言われて、私は慌てて袖で涙を拭って首を横に振った。


必死に涙をこらえようとした。

同じ歳くらいの女中に気を遣わせてしまったことも恥ずかしかったし、


それに……


「だ……だめだよ。受け取れない」

「でも……」

「だって、それをもらったのは──私じゃないんだもん……」

言いながら、また涙がこみ上げてきて

私は一生懸命に袖で目を押さえた。

「せっかくもらったのに……大切にしなくちゃ、だめだよ……」

私が何とか震える声でそう伝えると、女中は戸惑ったような表情で考えこむ仕草を見せて、それから

「はい、そうですね」

と頷いて、微笑んでかんざしを引っ込めた。

「でも、知りませんでした」

袖で目元を押さえている私を見つめて、女中は少しだけ強ばった声音で言った。


「おつるぎ様も宗助さんのことを思ってらしたなんて──」