恋口の切りかた

それから数日後のある日、

道場での剣の稽古を終えた私は、今日も宗助と縄抜けの練習かなと思いながら廊下を渡っていて、

ふと、
庭にいた女中の頭を、強い日差しに目を細めながら眺めて


頭から冷たい水をかぶったような気がした。


庭をこちらのほうへ歩いてくる若い女中の黒々した髪の中に、見覚えのある銀の輝きが見えた。

私の視線に気づいた女中は、軽く会釈してそばを通り過ぎていく。


女中の結い上げた頭には、牡丹の花の銀細工のかんざしが光っていた。


「待って!」


夢中で大声を上げてしまった。


「その、かんざし!」


びっくりした顔を向けてくる女中に、私は裸足で庭に降りて詰め寄った。


「それ、どうしたの!?」


忘れるはずもない。

それは、私が円士郎に欲しいと言えなくて
彼が自分で買って懐にしまい込んだ、あのかんざしだった。