恋口の切りかた

肝試しのとき私に、
少しも怖がらない女というのはかわいげがないものだろうかと照れた様子で尋ねてきた彼女の顔を今さらのように思い出した。

「それが武家の人間の生きかたなの?」

円士郎と風佳も、いずれは──




やだよ、エン……。




ぎゅっと、布団を握りしめた。

「霊子さんは、鬼之介のことが好きなんだよね?」

「ええっ!?」

ガン、という盛大な音がして見ると、霊子が天袋の中で天井に頭をぶつけていた。

「ななななななな何を申されますやら、おつるぎ様!
どっどどどどどうして拙者の鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進様への秘めたる思いをご存じなのでしょうかっ! これはしたり! ま、摩訶不思議!」

「……って、このあいだ、みんなの前で自分で暴露してたよっ!?」

意味不明なうろたえ方をする霊子に私は思わずツッコミを入れた。

今も省略なしで鬼之介の名前バッチリ口にしてるし……。
私なんか未だにちゃんと覚えられてないのに。

「もしも、さ。鬼之介以外の人と一緒にならなくちゃいけなかったら、霊子さんなら、どうする……のかな?」

鳥英は、本当にこのまま遊水以外の人と夫婦になるのだろうか。