夜、一人で寝るのが怖い時には重宝するので、私もせっかくだからそのまま住んでもらうことにしたのだ。
円士郎は大反対していたし、この人自体が怪奇現象みたいで怖いとも言えるのだけれど。
「……霊子さんも、縄抜けはできるの?」
「はい、もちろん! 拙者も縄抜けだけは得意技でござる」
「…………」
「だけは」って……霊子さん……。
「明日は拙者も一緒におつるぎ様を縛りたい……じゃなかった、鍛錬のお手伝いをしたいものでござる。ふふふ」
「その話はもういいからっ!」
天袋から器用に頭だけ出して長い長い黒髪を影のように垂らしている女に、私は慌ててそう言って、
あの後、円士郎から聞かされた隼人の婚儀と、
円士郎にも伝えた鳥英の縁談の話を頭の中で比べて溜息を吐いた。
「家のために、好きでもない人のところにお嫁に行くなんて、どんな気分なのかな」
鳥英がどこの家の息女なのかは、結局円士郎からは聞きそびれてしまったけれど、
一日で知ったこの二つの縁談は、私にはとても対照的なものに思えた。
隼人はずっと想いを寄せていた幼なじみと祝言を挙げるのだと聞いた。
でも、鳥英には──
遊水がいたのに……。
円士郎は大反対していたし、この人自体が怪奇現象みたいで怖いとも言えるのだけれど。
「……霊子さんも、縄抜けはできるの?」
「はい、もちろん! 拙者も縄抜けだけは得意技でござる」
「…………」
「だけは」って……霊子さん……。
「明日は拙者も一緒におつるぎ様を縛りたい……じゃなかった、鍛錬のお手伝いをしたいものでござる。ふふふ」
「その話はもういいからっ!」
天袋から器用に頭だけ出して長い長い黒髪を影のように垂らしている女に、私は慌ててそう言って、
あの後、円士郎から聞かされた隼人の婚儀と、
円士郎にも伝えた鳥英の縁談の話を頭の中で比べて溜息を吐いた。
「家のために、好きでもない人のところにお嫁に行くなんて、どんな気分なのかな」
鳥英がどこの家の息女なのかは、結局円士郎からは聞きそびれてしまったけれど、
一日で知ったこの二つの縁談は、私にはとても対照的なものに思えた。
隼人はずっと想いを寄せていた幼なじみと祝言を挙げるのだと聞いた。
でも、鳥英には──
遊水がいたのに……。



