恋口の切りかた

「俺の世話をしに、こうして秋山家に来てくれてるんだ」

「へえ、世話をしに……ねえ。どういう関係だ?」

「幼なじみだ。近々一緒になることが決まってる」

「そいつは──」

俺は目を丸くした。

「めでたいじゃねえかよ!」

素直に喜んでやった俺に対して、隼人は困ったように笑った。

……なんだ?

「相模家ということは──まさか物頭の相模惣右衛門の娘か!?」

娘の名を聞いた時から何事かを考えこんでいた帯刀が、急に声を上げた。

「二年前に、相手も知れぬ者から狼藉を受けたという……」

はっとしたように、帯刀が言葉を切り、

「失礼をした」

と、謝った。

「相手も知れぬ者じゃねーですよ」

隼人はふふっと小さく笑って、凄絶な目をした。

「俺の大事な幼なじみを辱めて、彼女の人生をメチャメチャにしたのは、あの蜃蛟の伝九郎だ」

「な──」

俺は思わず腰を浮かせて、

「そうか、それであんた、奴を──」

蜃蛟の伝九郎に対する隼人の数々の言動の謎がようやく解けて、俺は納得した。