恋口の切りかた

「縄抜けにはいくつかやり方があります」

宗助はボソボソとそう説明して、

「今のおつるぎ様でもすぐに可能なのは、小さな刃物を縛られる時に手の指の間に挟み込んでおいたり、袖口などに忍ばせておく方法や、最初から縄に隙間ができるよう相手に縛らせる方法です。

しかし、薬で眠らされ、着物も着替えさせられて、意識がない状態で縛られた場合──

一番有効なのは、間接を動かして抜ける方法ですね」


間接を動かす?

私は、怪我に繋がる危険性があるという虹庵の言葉の意味をようやく理解できた。


「まずは捕縛された場合、どのような縛り方をされる可能性があるのかからお教え致します」

宗助がそう言って、


「あの、ここでやるの?」

私はびっくりして言った。

「道場にはまだ稽古中の者がおりますが、皆の前で練習なさいますか?」

「う……っ」

私はうめいた。

それは嫌かも──

「まあ、吊された状態から抜ける練習をする時は──梁のある場所に移動しなければなりませんが」

霊子の一件でぶち抜かれたものの、今は綺麗に修繕された私の部屋の天井を見上げて宗助はそんなことを呟いて、

「吊された状態──!?」

私は思わず声を上げた。


そっか、そういう状況も考えられるんだ……。


半ばぼう然としながら、

捕縄術というのも、結構修得するのは大変そうだなあ、と改めて思った。