恋口の切りかた

私に見つかって天井裏に隠れていたのを、円士郎に気づかれ──

慌てて逃げようとしたところで天井ごと叩き落とされたということらしい。


天井から何かが四つんばいで這い回っているような音が聞こえたのも考えてみれば当然で、実際に霊子が天井裏で這って逃げようとしていたのだ。

うーん……こうして気づかれて捕まるなんて、確かに隠密としてはあんまり優秀じゃあないかも。


「ひょっとして、奉公人たちが、女のすすり泣きが聞こえると騒いでいたのもお前か?」

冬馬があきれたような顔で霊子を見下ろして尋ねた。

「ううう……里を滅ぼしたことが、生き残った他の者に知れたらと思うと恐ろしくて、恐ろしくて……拙者はどうしてこんなことになったのだろうと、己の不甲斐なさで毎日泣いていたのでござる……」


どうやら屋敷の怪奇現象の正体はこの人のようだった。


「あああ……でも、そうしたら、お屋敷の奉公人たちに泣き声を聞かれてしまって……」

霊子は幽霊そのままの泣き声を出した。

「騒ぎになって見つかるのが恐ろしくて……最近は、一人で外に出て……夕方に河原の柳の木の下でひっそりと泣いていたのでござる……」


あれ?


夕方に城下の川縁の柳の木の下で泣いている女。


どこかで聞いたような話だった。


確か、声をかけると──


「お前、それって──」

円士郎が引きつった顔で口を開いた。

「まさか、通行人にどうしたと声をかけられて、忍術だか何だかを使って姿をくらませて逃げたりとか……してねえだろうな」

「しましたが、それが何か?」

「オイ……!」


円士郎が固まった。


どうやら城下の七不思議の正体もこの人のようだった。