恋口の切りかた

世の中には色んな人がいるんだなあ、と私が思っていると、


「せっかく、宗助兄さまも部屋には近づかず、修行は上手く行っていたのに……なのに……」


霊子はまたしくしくと泣いた。


「円士郎様が、よりによって拙者の部屋で百物語などをぉぉ……」

「いや……俺だってさすがに、あの部屋の天袋に三年も人が住んでるとは思わねーし」

「あれから毎日毎日、部屋にはお坊様や祈祷師や修験者が入り浸り、お経や呪文を唱えて……ううう……あれでは拙者、部屋に戻れぬぅぅぅ」


霊子は私の背筋が凍るような、恨めしげな声を出して、


「仕方なく、屋敷の中で、何も入っていない空の天袋を探して……その中に入っていたら……ううううう……こんなことにぃ……」


それでこの人、私の部屋の天袋に入ってたのっ?


本当に世の中には色んな人がいるんだなあ、と私は思った。