恋口の切りかた

ううむ。この女、宗助にここまで言わせるとは……。


「嘘でないならば、どういうことだ? 里がもうないだと?」

宗助に無表情に睨まれて、おちこぼれくノ一だという霊子は震えながら、


「……宗助兄さまは、本当に里をお捨てになったのでござりまするな?
里のことなどもう、どうでも良いのでござりますな?

お……怒ったり……しないでござろうか……」


何の確認なのか、念を押した。

宗助が、無表情を崩して眉をひそめた。

「何の話だ?」

ごくり、と反らされた喉を動かして霊子は唾を飲み込んで、


「里は──滅ぼされました」


とんでもない発言をした。


「滅ぼされた!? 何者にだ!?」

目を剥いた宗助に、


「せ、拙者に」


と、霊子は言った。


「は?」


宗助が初めて見るようなポカンとした顔を見せて、


「せ……拙者が、滅ぼしました。

火薬庫の当番中に、蝋燭を中に置き忘れ……そのまま交代して、拙者が山菜採りに行ったところ……火薬に引火して、里ごと吹っ飛びました」


かぱっと口を開けて、俺たちはそう語るくノ一を見下ろした。

宗助の手がずるりと滑って霊子の髪から離れた。


「運悪く……折しも、重大な話し合いでお頭たちも皆、里に戻ってきている時で……お、お陀仏でござる……。

外に出ていて助かった者たちも、その後は皆、バラバラになり……里は消滅致しました」


あああ、兄さま怒らないでくだされぇ~! と、くノ一は頭を抱えてその場にうずくまった。