恋口の切りかた

「霊子、嘘を吐くならもう少しマシな話を考えるんだな」

「う、うううう嘘ではござりませぬぅ!」

宗助の冷徹な目を見て、霊子は髪をつかまれたまま潤んだ瞳でふるふると小刻みに頭を振った。

「なあ、おい」

息を呑んで二人のやりとりを聞いていた俺は、話に割り込んだ。

「つまりこいつが、里を裏切った宗助にさし向けられた刺客ってことか?」

「いや、それだけは有り得ないな」

宗助は即答した。

それだけは有り得ないのか?


「何しろこの霊子という女、里では屈指の──」

「屈指の?」


「──おちこぼれだったんだ」


宗助はやはり無表情なままで、キッパリと言い放った。


「こいつに俺が殺されるなど有り得ん」


断言だった。