恋口の切りかた

「そ、宗助兄さま」

と、霊子という名のくノ一は喘ぐように言った。

「ご……誤解でござる」


……ござる?


俺は女の口から放たれた堅苦しい言葉遣いに思わず眉を寄せて、


「拙者は里の命で兄さまを追って来たのではござらん。

そもそも──我らが里は、既にこの世から消えておりまするっ」


くノ一は子犬のように震えながら、そんな喋り方をして、


拙者……!?


更に女らしからぬ言葉に耳を疑った俺の前で、


「なんだと……? 里が既に消えている……!?」


宗助もまたこれには耳を疑った様子で、目を見開いた。