恋口の切りかた

「何奴ッ!?」

円士郎と与一とに刃を突きつけられている幽霊を見て、冬馬が左手に持っていた刀の柄に手をかけて、

「この女、留玖の部屋の天井に潜んでやがった」

と、円士郎が説明した。


それから円士郎は、まだ震えながら泣いている私のほうを見た。

「留玖、こいつは幽霊じゃねえ。人間だ」

「に……ニンゲン……?」

私は怖々、どこからどう見ても幽霊にしか見えない格好をした女の人を眺めた。

「ホラ、足もあるだろ」

言われてみれば、確かにこの女の人にはちゃんと両足がくっついている。


「な……なんで、人間の女の人が、私の部屋の天井に……」

「さァな。オラてめえ、ここで何してやがった! 正直に吐かねえか!」

円士郎が詰問して、女の人は「ひいい……!」と震えながらまた悲鳴を上げて、


「まさか、この女──」


驚いたような声を上げたのは、私のそばで立ち尽くしていた宗助だった。


宗助はずかずかと部屋の中に入っていくと、うずくまっている女の人の傍らにしゃがみ込み、

髪をつかんで顔を上に向けた。


円士郎の手にある蝋燭の光で、どこか儚げな、整った青白い女の顔が照らされて──


「貴様──レイコか!?」


と、その顔を見た宗助が言った。


レイコ? レイコって、なんだろう?


レイコ、レイコ、レイコ──


私は宗助の口から飛び出した言葉の意味を考えて、


「れ……霊魂……!?」


再び恐ろしい響きに辿り着いて泣きそうになった。