恋口の切りかた

「天袋の中に幽霊~?」

私の話を聞いた円士郎は不謹慎にもゲラゲラと笑った。

「そんな話聞いたことねえ。なァ、与一」

何が可笑しいのか与一もぷっと小さく吹き出した。

「ふふ、かわいいねえ、おつるぎ様は」

その言葉に、円士郎は尼僧姿の彼を睨みつけて、


「わかったわかった、留玖、じゃあこれからもう一度、一緒にお前の部屋の天袋を確かめに行こうぜ。

何しろここには霊験あらたかな、有り難~い右目を持つ祈祷師サマがいらっしゃることだしな」


と、嫌味を込めた調子で言った。


その円士郎の提案で、

今、私たちは私の部屋の天袋の前に立っていた。


うう、怖いよ、嫌だよう。


私は部屋の外の廊下から、障子にしがみついておっかなびっくり部屋の中を覗き込んでいた。

「この中から、女のすすり泣きが聞こえてきて、中に幽霊がいたって?」

しんと静まり返った天袋の前で、円士郎はニヤニヤ笑った。

「泣き声なんて聞こえねえじゃねーか」

「さ、さっきは……! さっきは聞こえてたんだもん!」

私は涙目で必死に言った。

「ふーん。じゃ、開けるぜ」

円士郎が天袋の引き戸に手をかけて、

私は「ひっ」と喉から声を漏らして身をすくめて、



からりと、天袋が開かれた。