恋口の切りかた

そうしたら、部屋の中には円士郎以外に、何故か見覚えのある尼僧の格好をした与一の姿もあって、

円士郎は慌てふためいた様子でよくわからないことを言って、

でも私はそんな話を聞いている場合ではなかった。


「出た! 出たの! 出ちゃったの!」


私は声の限りに、自分がたった今目にしたとんでもない怪奇現象を伝えた。


「お化け! 幽霊だよ! 女の人の……女の人の幽霊が……出たぁ!!」


立っていられなくて、私はしゃがみ込んで泣いてしまった。


やだやだぁ!

なんで、どうして、あんなものが、よりによって私の部屋の中に──


女の幽霊がすすり泣きながら口にしていた言葉を思い出す。


「ばか! あの開かずの部屋で御祓いなんかするからだよう! だからお化けが、私の部屋のほうに来ちゃったんじゃない──!」


きっとそうだよ。

あそこは、お化けを閉じこめてあった部屋なんだ。

それなのに私たちが戸の封を開けて、しかも中の悪霊を祈祷師が追い出したりなんかするから、私の部屋に──


「る、留玖、落ち着け。何言ってるんだ?」

泣きわめきながら訴える私の背中をさすって、円士郎が困惑した顔を見せて、

私にはそれがもどかしくて、


「私の部屋の天袋の中に、女の人の幽霊がいたのっ!」


これまでの人生で、一番大きな声が出たような気がした。


円士郎と与一が、目を丸くした。