【剣】
円士郎にカンザシを買ってもらうことができなくて、
どうして私は素直に自分の気持ちを言葉に出来ないのかなあ、と落ち込んでしまって、
一人で部屋にこもって、一日中うじうじと情けない気分で過ごして、
そうしたら、
変な声が聞こえて来たのは夕刻のことだった。
しくしくと、部屋のどこからかすすり泣くような声がして、
一瞬、あれ? 自分でも気づかないうちに、私はとうとう泣き出してしまったのかな、なんて思ってほっぺたを触ってみて、
けれど、
私の頬はすべすべと乾いていて、涙は流れていなかった。
気のせいかな? と誰もいない部屋の中を見回して、
私はぞっとした。
しくしくとすすり泣く声は続いていて、今度はハッキリと女の声だとわかった。
耳を澄ますと、その泣き声はどうも上の方から聞こえてくるようで──
「うう……どうして……祈祷師などを毎日毎日ぃ……忌々しい……あれでは部屋に戻れないぃぃ……」
泣き声に混じって、そんな女のうめき声が聞こえた。
「ううぅ……酷い……ひどい……ヒドイぃぃぃ……呪ってやる……みんな呪われろ……呪われてしまえぇぇ……」
恐ろしい怨嗟の声は、どうも私の部屋の天袋の辺りから聞こえてくるようで、
私は膝ががくがくと震えるのを我慢して、
意を決して手を伸ばし、
カラリと天袋を開けて──



