火は、あの狐面の男が自分で放ったものだったらしく、

兵五郎と共にあの場で俺たちと相対した後は町の外へと逃げるつもりだったのか、それとも初めから自分も焼け死ぬつもりだったのか──

いずれにしても竹林の住処へは二度と戻る気はなかったようだ。


今回の一連の事件が、五年前の怪死事件とは異なり、
焼死体のみで、得体の知れない化け物に殺された者が出なかった理由も、

無論、あの狐面が炎に取り憑かれていたこともあるのだろうが──

──五年前に竹林で見つかった怪死体と同じものが発見されていれば、竹林に化け物が棲み着いているのではないかと、討伐に乗り出す動きがあってもおかしくなかった。

意図的にか、結果としてそうなっただけなのかは判然としないが、

焼死のみに絞って事件が引き起こされていたことは、それを防ぐ効果も生んでいたのだ。


だから俺は、

店を逃げ出した兵五郎が、狐面の潜むこの竹林に入って行くのを見たと、
後をつけていた宗助から報告を受け取ってすぐに、

貸元が狐面の男の手を借りて俺たちに復讐する気だとわかったワケである。