「遥か大昔の遠い異国の地でな、無数の鏡と火珠(ひとりだま)を使って太陽の光を集め、戦で敵の船を燃やしたという話があるのだよ」


俺の話を引き継ぎ、屋根の上から鬼之介が言った。


「太陽の光は、火珠で集めることで物を燃やすことができるが、無数の鏡を使って集めた光でも同様に物を燃やすことが可能だ」


橋のたもとで焼死者が出た時も、そして今も、

キラキラと民家の屋根が放っている眩しい光。


しかしそれは瓦が太陽の光を反射したものではなかった。



俺は蒼白になっている兵五郎を睨み据え、



「つまり『天照』とは、その名の示すとおり──城下中の家の屋根に隠して設置した無数の鏡で太陽の光を集め、人間を燃やす仕掛けだったんだ!」



城下の町全てを丸ごと恐ろしい兵器にした「天照」の正体を唇に乗せた。



俺たちの頭上では、
屋根瓦の間に隠して設置された無数の鏡が、先刻と変わらずキラキラと輝いていた。