恋口の切りかた

「え……!?」

俺は驚いた。

「お前が戻ってきた後な、儂も面白そうだったんで昼過ぎにコッソリ村まで行って様子を見てきたんだが」


人のことは言えないが、元日からそんなことしてたのかよこの親父。


「盗賊の死体を調べたが、なかなか見事なもんだったぞ。

めった刺しにした槍や鎌はともかくな──致命傷を与えた刀傷。

切り口も見たが、どれも一撃か二撃。
大人でもああまで綺麗に相手を倒すのは難しいだろう。

いや──

逆に、子供だからこそできたのかもしれんな」


「ああ、なるほどな」

親父の話に虹庵がうなずいた。


何がなるほどなのか俺や平司にはサッパリだが。


「ま、子供なら相手も油断するわな、って話だ。

それに武器を持っていたとは言え、押し込み夜盗の類だ。
相手も武術の心得はなかったのかもしれん。

だが、それでも十二の年であれだけのことをやってのけることができる者は、稀(まれ)だ」


そう言えば虹庵も似たようなことを言っていた。