恋口の切りかた

幾日も悪夢とうつつの狭間をさまよい、ようやくおれの意識がはっきりしたのは、年が明けて十日も経ったころだった。


目が覚めると、やっぱり漣太郎の顔があった。

「レンちゃん……あれ? ここは──」

「ああ、オレんちの空き部屋だ」


結城様のお屋敷──!?


おれはあわてて飛び起きて、
すぐに目の前がくらくらして布団の上に倒れてしまった。


「いいって! まだ寝てろよ」

枕元に座っていた漣太郎が、慌てたように言った。


周りを見ると、
おれが寝かされているのはきれいな畳の部屋に敷かれた布団の上で、庭に面しているのか、障子には明るい光と庭木の影が映っている。

近くには火鉢が置かれていて、鉄瓶がしゅんしゅんと白い湯気をはき出していた。



これまでさわったこともない、ふかふかしたやわらかい布団の中に再び漣太郎に押しこまれて、天井を見上げ──


──ふと、思い出した。