恋口の切りかた

「てめえ、何考えてんだ! あの娘が可愛くねえのかよ!」

「じゃああんたは、武士がこんな書状に踊らされろって言う気か?」

庭に立ったまま、廊下の俺の胸ぐらをつかんで引き寄せ怒鳴る隼人に向かって、俺は鼻を鳴らした。

「はっ。そんな情けねえ真似ができるワケねえだろうが」

「──オイオイ、本気で言ってんのかよこのお坊ちゃんは……!」

隼人は頬を引きつらせた。

「情けなくても恥でも構うか! このまま俺たちが捜査を続けたら、おつるぎ様がどんな目に遭わされると思ってんだ! てめえは心配じゃねえのかッ!!」

拳を固めて、俺に殴りかからんばかりの剣幕の隼人の腕を、両横から鬼之介と遊水が押さえた。


「秋山殿……やめてやってくれ」

「察してやっちゃァもらえませんかね」


鬼之介と遊水が口々に言って、

ようやくハッと隼人が息を呑んで俺から手を放した。


「悪ィ……」


自分の表情はわからなかったが、隼人が俺の顔を見て気まずそうにうつむく。

それを視界の端に捉えたまま、俺は開きっぱなしになっている後ろの部屋の障子にもたれてずるずると座り込んだ。


「心配じゃねえワケ……あるかよ」


留玖、留玖、留玖、留玖──

頭の中にはその名前しか浮かばない。


「おい、大丈夫か?」


庭から俺に視線を投げてくる遊水に、

俺は座り込んだまま、辛うじて笑い返して見せた。


「気が変になりそうだ」


我ながら情けない声しか出なかった。