恋口の切りかた

「まさか、おつるぎ様も……拐かされたとは……」

ぼう然と呟く鬼之介の前で、俺は書状を読んだ。

内容は留玖のものとほとんど同じで、

鬼之介自身に調査から手を引け、そして俺にも捜査をやめるように言えということが書かれていた。

「しかし、何故お玉殿が……」

「お前が、俺たちと一緒に鈴乃森座に行ったせいだ……」

俺は奥歯を音がするほどに噛みしめながら言った。

「あの時に、俺たちと一緒にいるのを白輝血の奴らに見られてる。少し調べりゃ、お前がカラクリ発明家なんてやってることくらい、すぐに突き止められるだろ。月読に続いて天照の仕掛けまで解明されたらマズいと思ったんだろうぜ」

「だとしても、ボクとお玉殿は特に親しいという仲では……」

鬼之介は納得できないという顔だ。

「前に、お玉殿が何かと世話焼いてくれてるってお前自身が言ってたじゃねえか。奴らにとっては、脅しをかけるのに、繋がりなんてそのくらいで十分ってことだろ」

俺の言葉を聞いて、鬼之介は強ばった表情で黙った。

「拐かしだとこの者が番所に駆け込んで来たのでな」と、神崎帯刀が鬼之介を示して言った。

「貴様らにも関係ある話だったので連れて来たら……」

与力は精悍な顔を歪めて、這いつくばった志津摩を見た。

「まさか、日向がこのような事態を招いていようとは」

帯刀の言葉に、志津摩がびくりと肩を震わせた。

「功を焦って先走った挙げ句、結城家の御息女の身を危険にさらすとは──如何に見習いと言えど、町方同心としてあるまじき失態」

帯刀は底冷えのする声で言って、ずらりと刀を抜き放った。

「足軽身分であっても覚悟はできていような」

刀をぶらさげた帯刀を見上げて、志津摩が声もなくがたがたと震えた。