恋口の切りかた


 【円】

『妹君は預かった。生きたまま返して欲しくば、事件の捜査を直ちに中止せよ』


至極簡潔に、そんな内容のみが書かれた書状を、
庭に面した廊下に立ったまま、俺は手の中で握りつぶした。


「申し訳ございません!」


目の前では、同心見習いの日向志津摩が土下座していて、


「志津摩ァッ! ふざけるな! お前がついていながら、どういうことだ!」


志津摩の胸ぐらをつかんで引きずり起こし、思いきりその頬を殴りつけて怒鳴ったのは──


俺ではなく、隼人だった。



夜。

結城家の屋敷の庭だ。


日が暮れても留玖が屋敷に戻らないと母上や奉公人たちが大騒ぎをしていて、すぐさま昨日のことが原因ではないかと頭に浮かんだ俺は、隼人を呼んで、留玖の行方を知らないかと尋ねていたのだが──

隼人にも心当たりがないと聞かされていたところに、


血の気の完全に失せた、青い顔をした日向志津摩が、一人でふらりと現れた。

俺たちを前にするなり土下座して、申し訳ございません申し訳ございませんとひたすら謝り続ける志津摩から事情を聞き出せば──


昼間、留玖と二人でもう一度鈴乃森座を調べようとしたところ、例の盲目の三味線弾き白蚕糸から話を聞いている最中に一服盛られ、

気がつけば留玖の姿はなく、志津摩は俺宛の文を握らされて一人道端に打ち捨てられていたらしい。


「どうして指示も仰がず、そんな勝手な真似をした!?」

「申し訳ありません! おつるぎ様が、兄上のお役に立ちたいと熱心に申されるので、つい……」

問いただす隼人に対して、項垂れながらそう答えた志津摩の言葉を聞いて、

俺は頭を抱えた。



留玖──。