恋口の切りかた

「気が利くな」

俺が喜んで、

「円士郎様は甘いものに目がないとお聞きしていましたので」

同心はそう答え、

「おい、ここは番所だぞ」

帯刀がこめかみをひくつかせた。

「しかもこれって、三舟屋の豆大福じゃねーか」

「わかりますか、さすが円士郎様。ひとっ走り買って参りました」

「オイ!」

帯刀が爆発寸前になっている気もするが、無視。

「あそこの親父が作る豆大福は絶品だからな」

「ただ、もうすっかり九十九髪(つくもがみ)になってしまって……跡継ぎがいないようですから、どうなるんでしょうかねえ、三舟屋も」

何気なく言った、その同心の言葉に──




ツクモガミ。




俺は思わず豆大福を口に押し込んで立ち上がった。

急激に動いたせいでまた頭痛がして座り込むハメになったが。



「そうか、ツクモガミだ……最初にそう名乗ってやがったのに、どうして今まで気づかなかったんだ──」



モグモグと大福を噛みながら呟く俺を、同心と帯刀が怪訝そうに見た。



「ツクモガミ──付喪神──これもまた、化け物の名だ」