恋口の切りかた

「お、有り難ェ」

俺は湯飲みを受け取って、

「そう言えば、今日は志津摩の奴はいねーんだな。月番だろ?」

あの童顔の若い同心見習いの姿がないことに気づいた。

「日向なら、貴様の屋敷に行くと言って出ていったきりだが……」

「じゃあ、入れ違いにでもなったかァ?」

「それにしても、ずいぶんと時間が経つのに戻って来ておらんな」

俺たちはのんきにそんな会話を交わして、


彼と留玖がこの時どこにいたのか──

俺たちが知るのは夜になってからのことである。


「それから気になっていたのだが、貴様らが言っていたあの──青白く光る粉については、御奉行に上からこれ以上調べる必要なしとの話があったそうだが、どういうことだ?」

志津摩のことなどどうでも良いと思ったのか、帯刀はすぐに事件の話題に戻った。

「ああ、あれについては俺が直接、子細を報告書にしたためて、俺の上役の御家老様に提出しておいたぜ」

まあ、「面倒ごとを押しつけやがって」と文句を言いながら子細を書面にまとめたのは隼人なんだが。

この部分は、間違いなく俺たちの手柄にできたハズだ。

伊羽青文の話だと、あいつだって月読の正体については知らなかったワケだから、
鬼之介たちをうまく使って──さらには自分の身まで危険にさらしてそれを突き止めた俺の評価もこれで上がったかな。

そんなことを考えていたら、

「ついでに甘味もいかがですか?」

白湯を運んできた同心はそんなことを言って、皿に載せた豆大福まで持ってきた。