恋口の切りかた

「隣近所で怪しげなカラクリ作ってる奴がいたら、周囲の人間だって普通は気づくだろ」


大家に怒鳴られていた鬼之介が良い例だ。

まあ犯人が鬼之介ほど、はた迷惑な発明の仕方をしていたとは限らないが。


「それが、あんたら町方がこれだけ調べ回っても、そういう怪しい奴が隣に住んでるって話は出てこないんだろ?」

「現状で一番怪しいのは、貴様の知り合いだと言う、例のカラクリ鬼之介だがな」


人形斎が死んでいて、この事件に関わっているのが別人だという情報を持った者が事件を眺めるなら、当然そうなるか。

遊水が一番最初に疑った相手でもあるしな。


「それはねェよ。あいつの長屋ならもうとっくに俺たちが調べてる」


俺は春先のやり取りを思い出しながらそう言って、


「そうじゃなくてだな、つまりこれだけ調べて隣人がそうだとか、うちの長屋に住んでる奴が怪しいなんて話が出てこないのは──そいつが隣近所のいない場所に住んでるってコトなんじゃねーのか?」

「まさか山にでもこもっていると言うのか?」

「山だって急に人が住み着いたら目立つだろうが。ただし、そこが──人が意図的に避けるような──誰も近寄らない場所なら、話は別だ」

「人が意図的に避ける場所?」

「おいおい、帯刀さんよォ、これだけ言ってもわかんねーか。この城下には、そういう場所が今、何カ所かあるだろうが。
あんた自身、そのお仲間になってたんだぜ?」

「それは、まさか──」


ようやく気づいたか、帯刀はハッとした表情になり、

ちょうど、
番所に詰めていた同心が、二日酔いの俺に湯飲みに入れた白湯を持ってきた。