恋口の切りかた

「あれから町中調べて、貴様が言っていたどんでん返しの仕掛けのある壁はいくつも見つけたが……人形斎についてはサッパリわからん」

「だろうな」

「何だと?」

「今日来たのはそのことなんだがよ」


俺は肝試しの後に宗助から聞いた話を思い浮かべた。
このことも黙っておいて、こちらの手柄にしようかとも思ったのだが……

こいつには、助けられた恩もあるしな。


「俺の手の者が調べて突き止めた。人形斎ってのは、もう既に死んでる。それも二年も前に、城下を遠く離れた長崎でだ」

「なにっ!?」


帯刀が目を剥いた。


「だったら……我々が追っている、この事件のカラクリを作った者は──」

「別人ってこったな」


亡霊でも狐が化けたものでもない。

人形斎が死んでいるのだとしたら誰か他に、人形斎の名を騙って鈴乃森座に出入りし、鳥英に絵の依頼をし、月読と天照の仕掛けを作った人間がいるはずだ。

そいつを捕まえることに変わりはない。


「だから狐の面なんかつけてたんだろ」

「別人か……そうなると、見つけるのは難しいな。
狐面を外した別人の素顔で生活しているのでは、城下でいくら聞き込みなどやっても痕跡がつかめないのも頷ける」


そう言う帯刀に、俺は頭を押さえて溜息を吐いた。

この頭痛は二日酔いのせいなのか……


「あのなァ。いくら顔が別人でも、この際ンなことは関係ねーだろうがよ」

「どういうことだ?」


帯刀は格好良い顔をしかめて、首を傾げた。

俺はもう一度大きく嘆息した。