恋口の切りかた

十二の子供が村を襲った盗賊を皆殺しにしたという噂(うわさ)は、正月を迎えたばかりの城下にあっと言う間に知れ渡り、


「鬼の子」


というささやきをどこに行っても耳にするようになった。



うちでも、住みこみ奉公の下男や下女たちは刀丸のことを怖がっているようで、
ぶち切れた俺が刀丸はいいやつなんだ、何が怖いんだと問いつめると、


「だってあの血だらけの着物……──!」

「全部返り血だって言うじゃないですか」


彼らは気味悪そうに言った。


「洗っても洗っても赤い色がにじみ出て、桶(おけ)の水が真っ赤になって……そりゃもう──」


「あァ? ンなもん捨てちまえばいいだろうが」


眉根をひそめる俺に「私が洗ってやるように頼んだんだよ」と虹庵が説明した。

「捨てようとしたんだがね。あの子が、母親が縫ってくれた大切な着物だと言うものだから」