恋口の切りかた

すぐに謝りたかったけれど、円士郎はそんな時間をくれなくて、
悲しそうな顔で怒鳴って
物凄く怒っていて


「あんなワケのわからねーガキの女の相手なんかしてらんねー」


円士郎がそう吐き捨てるのを聞いて、頭の中が真っ白になった。




どうしたらいいのかわからなくて、泣きながら屋敷に戻って──




次の朝になっても、円士郎の目を見ることが出来なかった。

考えてみたら、
円士郎はいつも私には優しくて、こんな風に彼から怒りを向けられたのは初めてのことだった。

どうしよう。

どうしたら……


神崎帯刀に話すことがあると中間に言い置いて、
一向に止む気配なく降り続く雨の中を、円士郎が町へと出かけて行っても

私は声もかけてもらえなくて、自分から後を追うこともできなかった。


やっぱり私は、嫌な時には水の流れが見たくなるのだろうか。

傘を差して屋敷の周りを流れる水路へと降りる階段に立って、水面に雨が幾つも波紋を作るのをぼうっと眺めていたら、


「おつるぎ様」


水路の向こうから声がした。

遊水と出会ったのもこんな感じだったな、と思いながら顔を上げると、

柔らかそうな髪の毛をした、大きな目が人懐っこい印象の青年が、道からこちらに頭を下げた。

事件の捜査に当たっている町方同心の──ああ、まだ同心見習いと言ってたかな──


「日向さん?」


日向志津摩だった。