恋口の切りかた

その後、

俺は日がとっぷり暮れるまで飲んで、隼人に肩を借りて屋敷に辿り着いた。

「飲み過ぎだろ。ひとかどの侍がそんな泥酔するまで……」

隼人はぶつくさ文句を言いながらも、俺を送り届けてくれた。

うるせーな。

下手に酒に強いものだから、本気で酩酊したいと思ったら、半端ではない量を飲まなければ酔えない。

明日は確実に二日酔いになりそうだった。


「円士郎殿! そんな有様で敷居を跨ぐとは何事ですか!」

屋敷に着くなり、母上に叱りつけられた。

どう見ても俺が戻ってくるのを待ちかまえていたとしか思えず、どういうことだろうと訝ったら、

「円士郎、留玖に何をしたのですかっ! あんなずぶ濡れで目を泣きはらして戻って来るなど……かわいそうに」

げえっ?

母上の口をついて飛び出した言葉に、俺は頭が痛み出して思わずこめかみを押さえた。

なんで母上にまでバレて……
って、あんな格好で留玖を帰せば大騒ぎになって当然か。

俺と隼人は居店の主人が服を乾かしてくれて、今は一応まともな形(なり)をしているが。


隼人は乾いた声でハハと笑って、

「大変そうだな。じゃ、俺はこれで……」

これ以上は面倒を見きれないとばかりに引き上げて行こうとした。

「それから円士郎、宮川殿が昼からずっと、用があると言って待っていますよ」

「……鬼之介が?」

「事件のことでお話があるとか」

隼人が足を止め、俺たちは顔を見合わせた。