恋口の切りかた

「やだ……エン……!」

後ろから留玖の声が追いかけてきて、思わず手をついて暴言を詫びたい衝動に駆られたが、

俺の自尊心はそれを許さず、俺は当てつけるように声を大きくして、

「おい! 隼人つき合え! 色街に行くぞ!
あんなワケのわからねーガキの女の相手なんかしてらんねー」

離れた場所から目を丸くして俺と留玖を凝視していた隼人に、そう声をかけた。


背後で、息を呑むような気配があって


続けて、わああ──、という泣き声と、
バシャバシャと泥水を散らして走り去っていく足音が聞こえた。




──やっちまった……!




「あらら~……」


土手を駆け上がっていく留玖の姿を仰いで、隼人がボーゼンとした声を出して、


「馬鹿じゃねーのアンタ?」


その場にうずくまった俺を見下ろして、あきれた。

隼人の言うとおりだった。
大馬鹿だ俺。


それでも留玖が屋敷のほうへ走っていくのだけは確認して、少しだけ安心して、


あークソ……何やってんだよ。


俺は頭を抱えた。


「で? どうすんの? 本当にこれから色街行く気か?」

嫌味たっぷりに訊いてきた隼人を、俺は泣きそうになりながら見上げた。

「いや……居店で飲みてえ」

「ハイハイ。つき合ってやるよ」

ヘコみまくっている俺の様子をいつもの観察眼ですぐさま読みとったのか、有り難いことにそれ以上責めるような言葉は口にせず、

「本当に仕方ねーな」

この年上の侍はヤレヤレと息を吐いて苦笑した。