恋口の切りかた

耳の奥には刀丸の父親と母親が返してきた、うすら寒い言葉の響きが今も残っている。

自分のことではない俺ですら、断崖から突き落とされたような衝撃を受けたのだ。


そんなやつはうちの子じゃねえ──

鬼の子だ──


刀丸の絶望はどれほどのものだっただろう、と思う。

親を信頼しきっている子供にとって、
この世で、これ以上の残酷(ざんこく)で恐ろしい言葉はない。


いつも嬉しそうに家族の話をしていた。
それが一番大切にしているものだと俺にもわかった。

刀丸にとって、家族からの拒絶は地獄の苦しみだったに違いない。



俺は何とか刀丸をはげまそうと、
寝こんでいる彼の様子を日に何度も見に行っては言葉をかけたが、

いつもニコニコ微笑んでいて、
俺にも泣いた顔など一度も見せたことのなかった刀丸が、
涙で顔をぐしゃぐしゃにしているのは、見ていられないくらい痛々しかった。