恋口の切りかた

走り回って私のことを探してくれていたのか、円士郎は肩で大きく息をしていて、

濡れた髪から雫が流れ落ちている姿は、普段と違って何だか色っぽくて


私はさっきあんな場面を見たばかりなのにドキドキしてしまった。


「急に走っていくから……心配したぞ」


そんな風に言う円士郎を見上げて、
謝って、探してくれたお礼を言わなくちゃと思ったけれど──

途端に、脳裏には鳥英と抱き合う彼の姿がまざまざと浮かんで、私はうつむいて黙った。


「留玖……あのな、」

円士郎が慌てた声を出した。

「何か、勘違いしてるだろ」

「……勘違い?」

「さっきのは、鳥英が泣いてたから……それで、ただの友人として、ちょっと慰めてやってただけだ。何も疚しいことなんかしてねえぞ。
前にも言ったが、俺と鳥英は何でもねえ」


ただの友人として?


さっき、泣いている私に対して隼人が言った言葉を思い出した。


男の人って……そういうものなの?

わかんないよ……。


「それで、抱き合ってたんだ……」

口にした自分でもびっくりするくらい、非難に満ちた響きの言葉が飛び出した。

「え!? いや、抱き合ってたっつうか、胸を貸してやってたっつうか……」

円士郎が笑えるくらいうろたえた様子になった。

今の私には全然笑えなかったけれど。

「隼人さんは、そんなことしないって言ったよ」

「へっ?」

「エンは、女の人が泣いてたら、『ただの友人』でも抱き合ったりするんだ……」


あれ? おかしいな。

私、こんなことが言いたいわけじゃないのに……。

エンに、探してくれてありがとうって伝えたいのに、何でこんなこと言ってるんだろう。


そう思っても、焼きついた円士郎と鳥英の姿はどうしても消えてくれなかった。