恋口の切りかた

ざあざあと止む気配を見せない雨の中で、隼人はハナショウブのほうを向いたまま、窺うようにちらっとこちらに視線を投げて──


「──って、うお!? 号泣!?」


私の顔を見て固まった。


「え? あれ? ……あれえ……」


言われて、私は慌ててごしごしと袖で顔を擦った。

けれど、拭いても拭いても、頬を伝い落ちる温かい雫はちっとも無くならなかった。


結局、私も同じだったんだ、と思った。

隼人と同じで、こんな勝負なんかじゃ、何にもどうにもならなかったんだ、と思った。


「隼人さんは、好きでもない女の人とお互いに抱き合ったりしますか?」

泣きながら、私は尋ねた。

「はああ!? 何の話ですか!?」

物凄く頓狂な声が返って来たけれど、目まで川の中に浸ったように視界が滲んで、もう隼人がどんな顔をしているのか見えなかった。

「しませんよね? 男の人だって、そんなこと……」

自分でも、武家の娘にあるまじきはしたない質問をしているという自覚はあったし、きっと隼人にあきれられてるんだろうな、と思ったけれど、吐き出した途端に何かがこみ上げてきて、

悲しくて、悲しくて──私は止められなかった。

「抱き合ってたってことは、お互い好き合った者同士ってことですよね」

「えーと……誰かと誰かが抱き合ってるのを見たんですか?」

ためらいがちに、隼人がそう聞き返してきた。

答えられずに、私は袖で顔を覆って、わあわあ泣いてしまった。