恋口の切りかた

「……先生から──!?」


煩悩との葛藤を吹き飛ばす勢いで俺は衝撃を食らった。


「私は断った……あんな優しい人の申し出を……私は──」


俺の脳味噌が衝撃に麻痺している間にも、鳥英の唇からは震える言葉が解き放たれ続けて、


「あんな──優しい人を……傷つけて……」


白い頬を涙が滑り落ちた。


「それは──」


俺は、宗助の言葉を思い出しながら、彼女の素性を口にした。



「あんたが、雨宮家の人間だからか?」



俺の腕の中で、彼女が息を吸った。
そのまま細い体が強ばり、「知っていたのか……」と吐息のようなかすかな囁きが言った。


「いつから……」

「肝試しの翌日だ」

俺は正直に答えた。

「悪い。俺が命じて調べさせたワケじゃねーんだが、俺の忍が知らせてきた」

「そうか……」

「なあ、そのことを、遊水の奴は……」

「違うんだ」

「え?」

俺が、気になっていたことを尋ねようとすると、鳥英が遮って

「私は確かに雨宮の娘だが──身分を持ち出して、虹庵殿の申し出を断っておきながら……私は今、もしも私に嫁いで欲しいと言ってきたのが遊水だったなら……受けたかもしれないと──そう思っていたんだ……」


最低だろう、と一声絞り出して、鳥英は俺の胸にすがりついて泣き崩れた。