恋口の切りかた

「遅ェよ。こんな薄気味悪ィ場所でどんだけ待たせる気だよ」

え──?

本堂の前には人がいて、私はびっくりした。

屋根の傾いた本堂の前に立って文句を言ってきたのは、つんとした細い目がちょっと猫っぽい印象の、見知った二本差しの若い武士だった。

「隼人さん……?」

「おう、悪ィな隼人。留玖が怖がってなかなか連れ出せなかったんだよ」

私は慌てて、しがみついていた円士郎から離れた。

どうしてここに隼人までいるのかな、と思っていたら

「なんで俺までこんな場所に来なきゃならねーんだよ」

隼人が不満タラタラといった様子で私と同じ疑問を口にした。

「何言ったってどうせ見逃すんなら、俺はあの金髪の男の過去なんて興味ねーぞ」

金髪の……?

遊水のことだろうか。

「蜃蛟の伝九郎には興味あるんじゃねえのか?」

面倒くさそうな顔の隼人に円士郎はそんなことを言って、


その途端、隼人の目つきが変わった。


普段のこの青年からはちょっと想像できないような、

激しい怒りとも憎しみともつかぬ感情を秘めた目だった。


「事件にも関係あるってことか?」

隼人がその険しい目で円士郎を見て、

「当たり前だ。遊水のほうはついでに決まってんだろうが」

円士郎は苦笑し、ふと真面目な表情になった。


「それに隼人、あんたには俺に何かあった時のために情報を共有しといて欲しいんだよ」


円士郎の口から飛び出した言葉に私は驚いて、隼人が顔をしかめた。