恋口の切りかた

イレズミ?

唐突な問いに俺は首を捻る。
どうして隼人の口からそんな質問が飛び出したのか、さっぱりわからなかった。


「ございますぜ」

一方の遊水は、あたかもそんな問いかけが来ることをあらかじめ予測していたかの如く、満面の笑みで隼人に頷いた。

「ございますとも。こいつァようくご存じで。
闇鴉の一味は、黒い八咫烏の彫り物を入れるのも特徴でしてね」

「やたがらす……?」

「ホラ、足が三本あるカラスですよ。
蜃蛟の伝九郎の腕には、八咫烏があります」


隼人は青白い顔で黙り込んだ。

目を血走らせ、尋常ならざる怒りの滲んだ表情で、
杯を持つ手を小刻みに震えさせている。


「どうした?」

俺が訊いても彼はまるきり耳に入っていないという風で、じっと手元に視線を落としていて──


どう考えても、遊水が文に書いて寄越した──隼人を本気にさせてやるという内容に関係ありそうだ。

澄ました顔で杯を傾ける操り屋に、俺は目でどういうことだと尋ねたが、答えは返って来なかった。


隼人のただならぬ様子は気になったが、詮索しても無駄のようなので仕方がない。

「その伝九郎が属してる『ヤミガラス』ってのはどういう盗賊だ?」

俺は事件の話を続けることにした。

「『闇鴉』は、元は上方を荒らし回っていた連中だが、実は一つ気になることが──」

「やはりそうか」

言いかけた遊水を遮って口を挟む。

どこかで聞いた話と同じだった。

「──やはり、とは?」

「遊水、鵺の大親分も元々盗賊だって聞いたぜ。『鵺』もまた化け物の名だ」

「さすが、鋭いね」

遊水はふふ、と笑いを零した。

「円士郎様のお考えのとおり、鵺の大親分も元々は『闇鴉』の一味だ」


話が──繋がってきた気がした。