諸勢力が恐れているのは織田の現当主・信秀だ。

だが、真実この乱世の寵児であるのは、むしろ、その子である吉法師。

確信にも似て、玉林は、そう感じていた。

「なれば、王創。此度の生は、そなたの運命も、なまじ捨てたものではあるまい――」

呟きは、風に溶ける。

吉法師と供の二人が駆る、その馬の蹄の音が聞こえなくなるまで、玉林はそれ以上何もいわずに、彼らを見送っていた。