「要するにだ、俺は恋人だった桜子を信じて付き合っていたが、幸せにしてくれるのは兄貴だって言って、兄貴を選んだ・・俺を裏切った」



先生は、私が分かるように、簡単に説明してくれた。



「そして、兄貴が仕事の為に自分と結婚した事を知った桜子は、再び俺に愛を求めてきた。「寂しいから抱いて」と言ってな。俺は裏切られたけど、桜子を忘れる事が出来なかったから、抱いた。何度も何度もな・・・」




そう話す先生は、どこか悔しそうだった。




「そして、それが兄貴に知られても、兄貴は普通だった。普通どころか、俺に謝って来やがった。」


「謝る・・・何で・・・」


「「俺が桜子に寂しい思いをさせてるから、桜子はお前の所に行くんだろうな。すまない迷惑かけて。だけど、もうちょっと桜子を相手してやってくれないか。今の俺じゃ桜子を構ってる暇がないんだ」ってな。」


「ヒドイ・・・」


「俺はその時思った。兄貴に利用されてるだけなんだってな。だから桜子を抱いたことを後悔した。俺はその為に桜子を抱いたんじゃないってな・・・もちろん、その事を桜子が知ったら悲しむと思って、俺は内緒にしていた」





自分の話をしてるのに、桜子さんは清々しい顔をしていた。


信じられない。


先生は、辛そうなのに・・。




「そして、そう思われてる桜子は可哀そうな人だと思って、桜子の相談や、話相手になっていた・・ある会話を聞くまではな」


「ある会話??」


「ある日、兄貴と桜子が会話しているのを聞いたんだ。」