先生は、溜息をついてソファーに腰掛けた。
桜子さんは、私にほほ笑みながら言った。
「ほら蓮・・知りたいって・・教えてあげたら・・??私達が、かつて愛し合ってた事・・いや・・今も、愛し合ってる事・・」
「え・・・・・先生・・それって・・」
「はっきり言わせてもらうが、"今は" は絶対にない。今は桜子が勝手に俺に執着してるだけだ。ただ・・・過去に愛し合ってた事は本当だ・・。」
「・・・・・・」
私は、黙って話を聞いた。
「蓮はね、かつて私の恋人だったの・・だけど、私が最終的に選んだのは、蓮のお兄様だったわ・・つまり、私の今の旦那様よ」
「・・・・恋人は先生だったのに・・何でお兄さんと結婚を・・・」
お金持ちの世界の話かとも思ったけど、まだまだ子供の私には、理解するのは難しかった。
「それはね・・・蓮のお兄様の方が、私を幸せにしてくれると思ったからよ・・」
「幸せにしてくれる・・・お兄さんの方が・・」
「そう・・ねぇ実来ちゃん??・・恋愛と結婚は違うのよ」
「どういう意味ですか・・・??」
「まだ子供の実来ちゃんには分からないかなぁ・・。恋愛はお互いを愛し合うの・・だけど、結婚は・・お互いが幸せにな為にするものなの」
全く意味が分からなかった。
桜子さんはそう言って、先生に笑顔を向けた。
先生は、ずっと一点を見つめたままだった。



