マサ、気づいてる?

ケンの様子がおかしいってわかってる?

「ずいぶんと薄着なんだなあ」

「今、顔を洗いに行ってきたんだ。それと担当医師にも話をして……」

ケンの腕がぐいっと上にあがると、マサが苦しそうに顔を歪ませた

「首に真新しいキスマークがあるな」

今まで、聞いたことのないようなどすの聞いたケンの低い声が、室内を支配する

暖房のきいている部屋なのに、背筋に寒気がじわじわと上がってくるのがわかった

昨日の夜、私がつけたマサの首筋のキスマークが見えた

「顔を洗いに行くのに、靴下を脱ぐ必要があるのかよ」

ケンはさらに力を入れると、マサの足が宙に浮いた

死んじゃうよ!

「黙ってないで答えろっ」

ケンが怒鳴る

マサの顔が真っ青になっていくのに気がついたのか、ケンが腕の力を抜くと、マサが地に足をつけて激しく咳込んだ

「人の女に手を出してんじゃねえよ。くそガキが」

ケンが言葉を吐き捨てると、私の傍に近寄って来た

私は恐怖でびくっと肩が震えた

ケンは優しい目になると私の頭を撫でてから、抱きあげた

「帰ろう。こんな病院にいる必要はない。俺が…看病してやる」

「ちょ…えっ?」

お姫様だっこをしたケンが、私の鞄をひっつかむと病室着のまま、連れて行かれた

ナニ? 何で?

意味がわからないってば!