あなたがいてあなたといて【短編】




そして、時は過ぎ…―――――――――



卒業式。



夏惟と2人で懐かしむように放課後、校舎を回った。


職員室、図書室、科学室、音楽室、屋上…



思い出話をしながら、ゆっくり回った。




全部、全部、大切な思い出の場所。



そして、教室に向かった。



1年3組――――



あたしと夏惟が再開を果たした場所。



「最初、夏惟あたしのこと覚えてないかと思ったよっ…あはは」



「あ〜、そんなこともあったな!」



オレンジ色の光が差し込んでくる教室であたしはストンと机に腰おろした。




夏惟はあたしの目の前に立つ。




「花音…」


「…ん?」



座ったまま見上げるあたしに夏惟は不意打ちのキスをした。




一瞬だけだったのに、あたしの心臓は飛び出しそうだった。



そのまま、固まってしまったあたしに夏惟はポケットから出した小さな箱を差し出した。



その中には…指輪があった。



「結婚しよう、花音」



そう言うと夏惟は箱から指輪を取りだしあたしの薬指にはめた。



その時にはもうあたしの涙腺は意味を無くしていて、止めどなく涙が溢れた。



「か、い…っ…大好きっ」


そう言ってもう一度唇を重ねた。