母の口から出たのは予想外の言葉だった。



「しばらくアメリカへ帰ろうかと思うの」

「えっ?」

「おじい様の体調が悪くてもう長くないそうよ」

「そうなの…?」



母方の家って言っても付き合いなんてほとんどない。



自分の祖父母ですら幼い頃に数回会っただけ。



父の会社と母の実家の間でなにかあったんだとお手伝いさん達が噂してたのを聞いたことがある。



だからあたしも虎宇も、母の実家には10年行ってない。



「あたしも行った方がいい?」

「虎宇と留宇は…来なくて大丈夫よ」

「そっか…。気をつけてね?」



遠回し着いてくるなと言われたみたい。



なんだか気分が落ちた。



その日、学校から帰った虎宇が制服姿のまま部屋へやってきた。



「母さんだけ帰るんだってな」

「そうみたいだね。虎宇はなにがあったか知ってる?」

「なにかあったとしても留宇には関係ないよ。俺達は母さんの実家から敬遠されてるってことは事実だけど」



やっぱりなんかあったんだね…。