着物を着たのなんて久しぶり。



髪もメイクもあたし好みではない。



準備が終わって向かったのは料亭。



父に反抗したいのにまだ姿が見えない…。



タイラさんと部屋に入って用意されてる4人分の席に落胆。



「お相手はどんな方でしょう…」

「食品輸入会社の次期社長です」

「聞かなきゃよかった…」

「私はこれで失礼しますが…。お嬢様、なにがあっても動揺したりなさらぬよう」

「もう…大丈夫です…」



さらってよ雷さん…。



今すぐあたしを…ここから連れ出して…。



そんな願いは叶えられないことなんて十分わかってるんだけど…。



最後の神頼みのように雷さんを想った。



しばらくして開いた襖からは父の姿…。



「ちゃんと来たみたいだな」

「あなたを父に持ったことをこれほど後悔したことはありません」

「虎宇に似てきたな、憎たらしい」



隣に座った父と目すら合わせたくない。



虎宇があなたを嫌っていた理由が今ならわかる…。